ドリーム小説 がうなされた日から数日がたったある朝、
が目覚めるとすでに土方の姿はなかった。
はあの日以来、以前に増して、口数が少なくなっていた。


重い体を起こして起きあがり、着替えると居間に行った。
居間にはの分の朝餉がキチンと並べて置いてあり、
がそっと口をつけると冷めていて、
土方が朝早く出かけていったことがわかった。


「こんな暑い日に……」
そっと呟き、土方が用意していった朝餉を食べ始めた。



昼になると土方が荷物を抱えて帰ってきた。
顔が赤くなっていてそうとう暑いようだ。
は何も言わず、冷茶を出した。



「何か入っているのか?」
土方は不審に思い、を見上げた。
「……暑いだろうと思って出したのですが。」
は皮肉っぽく言い返した。
すると土方は目線をから湯呑みに変え、
少しの間湯呑みを見つめ、手に取った。


「…おう。」
土方は小さく言った。土方なりの礼だった。


「どういたしまして。」
そういうとは立ち上がり、その場を離れた。
土方は残りの茶を一気に飲み干し、湯呑みを持ってその場を去った。
土方が居間に来たとき、ふと見ると出かける前に用意していった朝餉は
ほとんど減っていなく、土方は溜息をついた。



はお盆を元の場所に戻すとまた、いつもの縁側に腰掛け、外を眺めていた。




気が付くと周りはすっかり夕方になっていて、暑さもマシになっていた。
どうやら寝てしまったらしい。
昨日はうなされてよく眠れなかったからだとは思った。
起きて少しボーッとしていると



「おい」
と土方がやってきた。



「行くぞ。」
「…どこへ?」
「祭りだ。」
「……。」


そういうと土方はの腕を掴み、鏡のある部屋に連れて行った。



「なんですか?」
は掴まれた腕を振りほどこうとしながら言った。
しかし、思いのほか、強く掴まれていて振りほどけない。


「……痛いんですけど。祭りに行くんじゃなかったんですか?」
は不満そうに言った。



土方は無言で掴んでいた腕をはなすと、
今日抱えて帰ってきた荷物をひろげはじめた。


中には高そうな着物が一式、帯から下駄まで全て入っていた。



「早くしろ。」
ようやく喋ったと思えば何をいうのか理解できず、は土方を呆然と見た。
状況が理解できていないことを察すると土方はまた溜息をつき言った。


「今日は祭りだ。お前はそれを着て行け。」


「……。できません。こんな高そうなもの。」


「お前の為に買ってきてやったんだ。無駄にするつもりか?
 それとも何か?俺に着ろって言ってるのか?」


「あぁ、それはいいですね。土方さんは少し女顔なのでよく似合うと思いますよ。」


「…冗談を言ってる時間はない。
 せっかく買ってきてやったんだ。気にせず、着ろ。」


「……。」


私の為に買ってきた……?
変だ。とは思った。
もしかして土方は前にうなされていた事を気にして、気をつかってくれているのだろうか。
人混みが嫌いな土方は祭りに自分から行くとを言い出すとはとても思えない。
土方なりの気遣いなのだろうか。
少しでも私が元気になるようにと……?



もしかしたら違うのかもしれない。
私とは別の相手に買ったのだが、何らかの事情があって渡せず、
私に渡したのかもしれない。



しかし私の為に買ってきてくれたと言っているんだ。とは思い、


「では、お言葉に甘えて。」


と土方が聞きたかった返事を返した。








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文才本気でない…。